私が寝ているベッドから窓までは50p程しかなく、比較的厚いカーテンとはいえ日が昇ってくると否応なしにも明るさを感じるので、朝が来た ということは寝ながらにしてわかるのだが、このところその明るさが感じられず、時計を見ないと今何時かわからい日が続いていた。
調べてみる冬至の日の出が7時1分、日の入りが16時49分と思っていたよりずっと遅い日の出と早い日の入りであったことに少し驚いた。
前置きが長くなったが、
数年前から“コスパ”や“タイパ”という言葉があちこちで飛び交っていて、皆様も「〇〇の食事はコスパがいい」とか、「この業務はタイパがよくないね」なんていうのを聞いたり、使ったことはあるでしょうが、時代遅れなのかもしれないが、実はこの言葉は自分からの話題提供の会話の中ではたぶん 自分からは使ったことがないように思う。
*コストパフォーマンス(コスパ):支出した費用とそれによって得られたものとの割合。費用対効果。
これは日々の生活の中でも仕事をする上でも重要であることは分かっているが、このことに重きを置きすぎるために何かを失っていないか心配する時もある。
もちろん費用対効果を探りながら生きていきていくことは必要であろうが、逆にコスパにとらわれずに生きていくことも必要なのではと感じることもある。
レストランであれば一定のメニューから量的なことは分かるし、空腹を満たすためだけならボリュームにだけ目を向ければいいのでコスパの追及は比較的容易であろうが、味は人によって感じ方も違うし、味だけでなく店の雰囲気も含め こういったことまでコスパということで数値化できるのかどうかは悩むところである。
実は我々の税理士業界でもこのコスパという言葉が使われており、ネットでは、「格安税理士」、「安くて評判のいい税理士」、「コスパのよい税理士の見つけ方」なんていう見出しが目に飛び込んでくる。
こういったことは依頼者からすれば当然のことであるし、比較・検討した上で税理士を見つけることは今や必須かもしれないが、我々の仕事は各税目の申告書を作成することは当たり前の業務であって、それ以外にどれだけの付加価値、つまりプラスαを付けられるかが他の税理士との差別化であると考えながら仕事をしているので、「法人の決算 いくらでできますか?」とか「相続税の申告業務はもともと高くつく業務と聞いているので、できるだけ安い税理士さんを探します」なんて言う納税者に遭遇すると何とも言えない気分になる。
こういった時には事務所として提供できるサービス内容をしっかりと伝え、基本的な報酬を提示し、あとは依頼者の判断に委ねるしかないというのが事務所の考え方である。
その時 心の中で思っている「税理士の業務って値段だけで決めるものではないですよ」ということを口にすることはないし、税理士自らいうことではないと思っている。
最初に掲げたもう一つのタイパ(タイムパフォーマンス)という言葉であるが、時間をどれだけ効率的に使うのか、また一定の投下時間からどれだけの成果物が得られるかというこのこと自体は、仕事をする上では常に念頭に置いて業務に当たらないといけないし、経営効率を追求する立場である経営者であれば、さらにその重要度は高いものになるのであろう。
「少ない労力で大きな成果を得る」というのがコスパ、タイパを論じる意義だとすれば、そのこと自体は万人にとって良いことなので、何ら非難されることではないが、“コスパ”、“タイパ”という言葉に何かしら薄っぺらな概念というか、我々の世代にとってはスッと頭の中に入ってこないのは、もしかすると年のせいなのかもしれない。
ただ、一見 無駄と思われること、つまり無駄な時間を費やしてしまったなと思うことの中にも、後で表に現れる顕在的な成果物が潜んでいたりすることもあるし、40年もこの仕事をしていると何年も前に経験したことが役に立つことも数えきれないほどある。それがその当時はそれほど重要でなかったことであっても。
コスパやタイパを追求することは必要であるが、無駄と思われることの中にもきっと意味のあることもあるはず と思いながら業務、そして日々の生活を送っているので、こんな言い訳がましい話になってしまっていることはお許しいただきたい。
最近、言葉一つとっても年代の違いを感じてしまう世の中になってしまいましたよね、残念ながら・・。