京都は現在1,008円なので1,060円近くになるのであろうが、当事務所の顧問先は上場企業はもちろんのこと、名の知れ渡っているような事業所もないので、この人件費アップを吸収できる体力のある事業所は限られている。
最低賃金は法律で決められているのでこれを守らないわけにはいかないし、他の事業所との比較で見劣りするといい人材も集まりにくくなってきているのも事実であるので、この最低賃金のアップというのは中小企業の経営者のとっては最大の関心事であり悩みの種である。
ここでとり上げられている最低賃金というのは時給のことであるが、これに伴って月給で働く正社員の給与水準も確実に上がってきている。
顧問先を訪問しても給与水準が上がってきているということは、経営に直接響いてくるのでどの経営者もすごく敏感で、中にはどこにもぶつけられない不満を我々税理士事務所にぶつけてこられる方もいらっしゃる。
とは言っても我々が最低賃金を決めているわけではないので、あくまで不満や愚痴のはけ口として思っていることを口にされたのを聞くことぐらいしかできない。
顧問先は京都市以外では東京、大阪、神戸、それに福岡と 都市部にも数件あり、その都市近郊ではある程度の景気のいい波を受けているところもあるが、都市部であっても医療機関であれば自由に値上げができるわけではなく、診療報酬という決まった収入構造の中での経営であるので結構きついものがある。
ただ、不満を言うのは気分的にはスッキリするかもしれないが、大した解決にはならないので、やはりこういった経費の増加にいかに対処し、どんな面で無駄を省くかということを金額的には些細なことであっても考えていかないといけないが、出だけでなく入り、つまり最終的にはいかにして売上(収入)を確保していくかを常日頃から考えていくしかない。
この場で変な発言をすると、面と向かって口にはされないが「税理士さんって決まったものが入ってくるからいいですよね」と思われる方もあるだろうし、実際にそれに近いことを言われたことがないわけではない。
今回の最低賃金の話に戻して考えてみると、気に入ろうが入ろまいが国が決めたこの金額には抵抗できないわけであるから、限られた経費の中でいかにしていい人をとるかを考えるしかないのであろう。
比較的 売上が落ち込まずにいる事業所の経営者は、「今まで人件費は一般の経費とは違うという認識でいたが、最近の人手不足や賃上げの状況を考えると、人件費という特別なものでなく、事業所を運営する上での必要経費であるという言い方をされる方もあるし、ある業績のいい事業所の経営者は、人件費のことを「売上を稼いでくれるための必要経費」という言い方をされる。
私は人件費を一般の経費といっしょにみるようなことはできないが、確かに売上アップに寄与しているのは経営者だけではないことは常々感じているし、経営者だけでできることって限られたことである。
そういう意味では最低賃金のアップとどう向き合うか、まさに経営者の経営センスと度量の見せ所である。
こんな勝手なことを言っていると、明日から「払えんもんは払えんで」とお叱りを受けるかもしれないが、現在 避けて通れないくらい厳しい求人・雇用環境であることは事実であるので、それに対して正面突破とはいかなくとも ある程度現実と向き合いながら各事業所の考え方で対処していくしかないのであろう。
それにしてもこの最低賃金のアップが毎年秋の恒例行事になってきているが、払う側だけでなく給与を受け取る働く人の生活が改善されているようには思えないところに我が国の苦悩がある。
事務所のスタッフには正面切って言えないが、私だってこのことで悩んでいる一人であることには間違いない。
過去に受けた研修で大きな企業の経営者が「人は経費がかかるものと捉えるのではなく、資産と思うようにならないとダメ」と言われたことを覚えているが、私自身その域には達していないので、まだまだ経営者としては半人前なのでしょう。
どの顧問先にとっても今や“人”って最大の課題ですよね。