・ある限られた分野の事柄には精通しているが、それ以外の知識や社会的常識が欠けていること。また、その人。
何で急にこんなことを言い出したのかというと、顧問先の方、あるいは顧問先以外の金融機関をはじめとする我々の業務に関わるいろいろな職種の方々と話をしている時、「廣井事務所は医療業界に強いですからね」と言われることがある。
税理士事務所である以上、医療関連の以外の業種の顧問先もいくつもあるが、確かに我が事務所の顧問先の中で一番多い割合を占めるのは医療機関である。
どんな事業でも強みの部分をさらに伸ばすというのは、事業を進めていったり あるいは 拡大する上では鉄則なのかもしれないが、一つの強みだけにこだわったり、追求するあまり 他が見えず逆に強みを発揮できないケースもある。
特定の強み以外には興味がなかったり、目も向けないような“専門バカ”になってはいけないということであり、逆にそのことが弱みにもなりかねないという可能性がないわけではない。
税理士業界では医療以外にも「相続に強い税理士」、「ITに詳しい税理士」等の広告をよく見かけるが、他にも関東周辺や信州、北海道には「農業に強い税理士」がいるのを聞いたことがあるし、「美容業界」、「建設業界」、「公的団体」に詳しい税理士というのも見聞きすることがある。
そうそう京都ならではということでいうと、宗教法人(寺社)の顧問先をたくさんお持ちの税理士事務所もある
税理士である以上、税務と会計のプロであることは当然のことであるが、限られた専門分野の強みだけに頼っていては、知識の範囲も限られてくるし、やはり他の分野のことも知ったり、比較することで 強みである部分が、更にレベルアップしてくるようにも思える。
開業医を例にとると、耳鼻咽喉科のクリニックへ咳き込む患者が来た場合、その咳の原因は喉にあるだけでなく、当然のことながら肺や他の内臓の疾患が原因である場合もあるし、もしかすると精神的なストレスに起因していることも考えられる。
こういった場合、咳の原因が自分の専門分野以外の要因で起こることも当然 頭に入れておかなければならないし、専門分野以外の知識や経験がどれだけあるのかでその診断結果は大きく変わってくるように思う。
私の顧問先の60代のドクターで若い頃 すごく本を読み(ご本人は「読みあさって」と言われた)、小中学校の頃は学校の図書館にある本の大部分を読んでいたので、先生から「次どんな本が欲しい」と聞かれたこともあるとおっしゃっていた方がいる。
この方と話をしているとその読まれた本というのが文学作品ばかりでなく、あらゆる分野に及んでいて、社会人になってからもその“癖”は続いているようであるし、「この経験は日常の診療にも生かされているなと思うことがある」とおっしゃったことが印象に残っている。
あと、もう一人 別のドクターは、院長室に医学書と並んでここ数年間に読まれた医学書以外の本がところ狭しと積み上げられている。
この方も専門分野はもちろんのことのこと、専門外の医療についても非常に詳しいし、これだけの読書量があるので医療以外の知識も相当なもので、私が面談した後、帰る時にはいつも 私自身が「新しい発見をした」、「得した」というような気持になってそのクリニックを後にする。
こういったことが、この2つのクリニックに患者が溢れる要因であるのかどうかは分からないし、このことだけでクリニックの状況を判断するのは早計かもしれないが、どちらの方も話していて“人を納得させる力”があるなと思うことがある。
こういった例を見ていると自分の税以外の知識の浅さにあらためて気づかされるし、なぜこれまでもっと探求心を持って生きてこなかったのか悔やまれるばかりである。
ただ、人間なんていうのは自分のレベル、つまり身の丈に合った生き方しかできないので、今を一生懸命生きることで今後の人生 救われることも出てくるのではと思っている。
話しがタイトルとは少し違う方向へ行ってしまったが、“専門”といわれる狭い分野の探求だけでなく、税を中心に据えながら、その周辺の知識や情報が提供できるよう 人間として幅が持てるようになることが必要なのであろう。
私のように意志の弱い人間ってついつい楽しいことに行ってしまいがちだが、決して無理やり行動するのではなく、「やりたくなる」というのがまずは大事なんでしょう。
今回あらためて思ったが、周りにすごい人がいるって ある意味恵まれていますよね、刺激があって・・。