実はもう少し掘り下げ年代別で見た場合、比較的若い層ならこういった理由も理解できるが、70歳以上で「時期尚早」が30%もあったのには驚いた。
では、何歳になれば相続に関する対応をするのか、70歳以上の方に確認したい気持ちになってきた。
相続というと ついつい資産家の相続税への対応のことが思い浮かぶが、今住んでいる家を誰に相続させるのかとか、お墓のことや不動産の管理・処分に関してはどのようにするのか等、資産家でなく、いわゆる一般人であっても相続ということに関しては何らかの事前対応が必要と思われる。
ここでは深い部分までは触れられないが、80歳を過ぎた方でも、「今後のことはもう少し経ってから考えようと思っている。」とおっしゃる方も何人かいらっしゃる。
別に財産とか相続税がどうとかいうことではなく、自分が亡くなった後のいろいろなことの対処の仕方は、子供をはじめとする親族の方にある程度 話しておく必要はあるように思うのだが・・。
突然 亡くなったり、亡くならなくとも救急車で病院に運ばれるようなことがあっては、取引のある銀行や証券会社、それに通帳や印鑑の場所さえ本人しか分からず、困ったことも起こってくるように思う。
あと、今後 相続の仕事で大変になってくるケースとしては、最近 増加傾向にある未婚の方やあまり親族と交流することなく亡くなっていかれた場合であろう。
どんどん高齢化が進んでいく中で、私の周りでは亡くなられた方の年齢が90歳以上の例もいくつかあり、実はその亡くなられた方(被相続人)の関係者に連絡することさえ困難なことも生じてきている。
少し話がそれるが、頭の整理も兼ねて、相続関連の冊子に載っていた平均寿命の推移を掲げてみる(抜粋)。
[昭和22年] 男:50.06歳 女:53.96歳
[昭和40年] 男:67.74歳 女:72.92歳
[平成 2年] 男:75.92歳 女:81.90歳
[令和 2年] 男:81.64歳 女:87.74歳
これを見て驚いたのは、戦前の平均寿命が短いことや私が生まれた頃(私は昭和37年生まれ)と現在を比較すると、男女とも15歳近く平均寿命が延びている点、そして、ついこの間のような平成2年からも5歳以上延びているという点、これらは全て想像していた以上であった。
平均寿命の伸びは医療技術の進歩が一番の要因かもしれないが、変な言い方(場合によっては失礼な言い方かも?)をすると。本当にそう簡単には死なない、そして死ねない世の中になってきている。
そういう意味においては、最初の相続についてのアンケートで「何も対応していない」という人が多いのもうなずけるが、これはこれで個人的には問題を先送りしているだけのような気もする。
先週、70代半ばで今後の人生について、資産、家族、仕事(開業医)についていろいろの角度から かなり真剣で考えている方と面談する機会があったが、この方はあと1、2年のうちに廃業(継承)や自宅の処分、転居も含め大きな決断を下されそうで、ある意味 今後の見通しがはっきりしている数少ない人である。
一般的にはサラリーマン等 定年のある方は、節目節目でいろいろな変化があるが、開業医を含め事業をされている方は、定年もないので年齢についての節目がつきにくく、特に後継者がいらっしゃらなければ健康状態の変化があって初めて、節目が訪れるという方も少なくない。
我々の仕事も税務・会計が本業とはいうものの、長くお付き合いしてきた経営者の方々の事業や人生の終い方というか、ソフトランディングの仕方をいっしょになって導くことも大事な仕事で、今まで関与してきたことへの恩返しともいえるようにも思う。
ただ、こちらがいくら気をもんでもご本人がその気にならなければ、話は一向に進まないのが現実であるが。
それにしても平均寿命はどこまで延びるのか? また延びることメリットだけでなく、問題点もしっかり把握しながら対処していく必要があるように思う。
それにしても今回のデータを見てすごいと思った。女性であれば85歳で亡くなった場合、「ちょっと早いですね」ということになるのですから・・。