まだパラリンピックはあるとはいうものの国の内外から批判されたりあるいは注目される中、観る側も多少高揚感を抱いた東京オリンピックは幕を閉じた。
その後、自分の生活もやっと通常に戻りそうだった矢先のこの長雨、何か気が乗らないままお盆へ突入し、カミさんの両親の墓参りをした以外はほとんど何もしないまま お盆は終わろうとしている。
こんなご時世でどこにも出かけられないのでテレビで高校野球でもと思っていたが、こちらの方も開幕が例年より遅かったのに、さらに順延に次ぐ順延でやっと今日 大会第2日目という前代未聞のスケジュールとなっている。確か以前はお盆明けには決勝戦だったと思うが、こればっかしは人間の力ではどうしようもない。
こんな気乗りのしない休日であるが、今日は先日、地下鉄の中でちょっとうれしいことがあったのでそのことに触れてみることにする。
4、5日前、仕事で地下鉄に乗る機会があり、事務所から5分少々とはいえ地下鉄今出川駅まで歩くと少し汗ばんだが、そのままホームに下りると目の前に地下鉄が入ってきたので飛び乗った。
空いていた座席に座り、すぐさまスマホでメールの確認をしたり、ニュースに目を通したりしていたが、体が熱くなっていたせいもあってか いつも以上に眼鏡がくもり、ポケットから取り出したハンカチで幾度となく眼鏡を拭いては画面を見、すぐさま またくもってくると、ハンカチで拭くということを何度か繰り返していたところ、向かいの席に座っていた70歳くらいの男性が「よかったらこれ使ってください。結構くもりはとれますよ。」と言って眼鏡のレンズくらいの大きさの薄い包みを渡された。
突然のことだったので、今一つ何だかわからないまま、いただいたものを見ると”メガネクリーナー・・くもり止め”と書いてあり、少し間を置いた後、「ありがとうございます」と軽く頭を下げたところ、その男性もニコッとして頭を下げられた。
地下鉄の中で席を譲ったり、空けてもらうことはあっても、何かをもらうなんていうことは今まで経験したことはない。
最近 物騒な世の中なので見知らぬ人から物をもらうなんて、どちらかというと警戒しないといけないという少し悲しい社会になってきているが、今回はほんのちょっとしたことではあるが、ホッとするやり取りであった。
実は私もマスクをしだしてから、メガネがよくくもるのでポケットに今回もらったものとよく似たくもり止めのペーパーを持っていて、この日もポケットに忍ばせていたが、この男性のさりげない行動に思わずお礼を言いながら受け取っていた。
私が大きなカバンを抱えて、額から流れる汗を拭いていたので余計に目を引いたのかもしれないが、世の中が忘れかかっているような小さな親切を受けたことで、なんだかこの日はハッピーな日 という思いで一日を終えることができた。
たまたま降りる駅もいっしょだったので、降り際に再度軽く会釈をしながら「すみませんでした」と言うと、その男性は「お互い暑い時は大変ですよねメガネをかけている者は。特にコロナになってからはマスクもありますしね。」と言った後、私とは逆の方向へ行かれたが、私は5mほど行って振り向くと、少し足が不自由なようで、足を引きずりながらホームをゆっくりと歩いておられた。
その姿が私の頭に残り、その後 ここ数日の疲れも忘れたかのように、エスカレーターに並んでいる列を横目に自然と階段の方へ足が向かい軽快に?階段を昇っていた。
ちょっとした親切でこれほど気持ちが変わることも不思議な気もするが、人間って所詮 ”気持ち次第”っていう単純な生き物なんだなと再認識した。
ちょっとしたことが実行しづらい世の中になってきている時代でのこの日に受けた小さな親切は結構インパクトがあり、今日 みなさんに伝えておきたいなと思ったワンシーンでした。
以前(昔)は、こんなこといくらでもあったのにねー。