2019年05月19日

No629:理想とする親子の事業承継の形

 “事業承継”という言葉は多くの方が今まで何度か耳にされたことはあると思うが、この中身について掘り下げて考えたことのある人は、引き継がれる側と引き継ぐ側の当事者以外ではごく限られた方かと思う。
 私自身も親から引き継いだ事業ではないので、当事者としてこの“事業承継”の手順やその大変さが分かっているかというと、分かっていない部分が多いとしか言いようがない。
 ただ、日々 中小企業の経営者や個人開業医の院長と接していると、この問題は避けて通れない 重要、かつ、切実な問題であるというのも十分に認識している。
 子供が違う道へ進んだために早い段階から親子承継はないという経営者や院長はある意味、心の中で割り切りができていて、「うちは私の代で終わり」と言い切られる方もいらっしゃるが、多くの方が「何とか引き継いでもらえないか」と思っておられるのも現実であろう。

 ある企業の経営者は自分一代で世間からもしっかりと評価される会社を作り上げられたが、子供(30〜40歳代)を見ているといつになっても自分の子供に対しては「まだまだ」という評価しか下されず、そのうち子供の方もいっしょにやっていくより外でやる方が気分的に楽 という判断のもと、親とは違った形で歩む人(子)も少なくない。
 そんな中で傍から見ていてうまくいっているなと思えるケースが出てきているのでここで少しだけ紹介することにする。

 ある医療法人(一人医師)を運営されているが理事長(父)が、資格のある実の娘さんだけでなく、そのご主人と若い夫婦二人で協力しながら運営する分院を立ち上げられ(立ち上げさせて)、診療科目こそ本院とは違うが、現在とてもスムーズな形で運営されているところがある。
 ここは娘さんのご主人を院長(A先生)とし、実の娘さんは副院長(B先生)として補佐する形をとっておられ、実質的な医院の運営はA先生がなされている。
 また、医療法人から二人に対する報酬(給与)は、理事長が「まだ、儲かるかどうかも分からない者にむやみやたらの報酬を出すわけにはいかない。」という方針のもと、非常に抑えた報酬の額となっている。私から見ても実の娘夫婦が経営に参画し、将来の後継者になられるのであればもう少し出してあげてもいいのではと思っているが、理事長は、「人並みに支給するのはまだまだ。」となかなか手厳しい。
 ただ、こういった理事長(親)の考えにA先生とB先生は反発するわけではなく、しっかり患者を増やし、経営的にも安定させて、「もう少し、報酬を上げてやってもいい」と言われるようになりたいという思いが強く、そのためのには苦労をいとわないというか、しっかりとした診療をされており、その結果、患者の評判もよく、来院患者の数は増加の一途である。
 この事例でうまくいっている要因は、よくある 甘すぎる親 でもなく、また、一方的にいろいろなことを押しつけるような厳しすぎる親 でもなく、「給料上げて欲しいのなら自分たちが頑張るしかないやろ」という子供側に責任を持たせるやり方をされている点、そして、子側も今まで何度か耳にしたことがある、「今の医療はお父さんの時代とは違うんであんまり口出しせんといてな」というような、若い世代の考え方を親に押しつけることもなく、まずは医療界で十分な実績を積んできた親に追いつこうという姿勢を持たれている点、そんなところであろうかと思う。
 親(理事長)は娘夫婦に、「開業時に時期尚早と購入を見送った医療機器をそろそろ買ったら」おっしゃったが、このA院長は、「まだまだ早すぎます」と断られたと聞いて、A院長の男の意地のようなものを感じ、私は、「A院長とB副院長なかなかやるな、もう さほど心配ない」と思ったのも事実である。
 
 今回の事例のポイントは、まず親側が厳しすぎたり、甘すぎたりせず、また子の方も親の懐ををあてにし、お金は頼めば出てくると思い込むような姿勢でない という点であろう。
 ここで取り上げた親子承継はまだまだ日も浅いので、今後どうなるか分からない部分もあるが、私にとって非常に注目し、かつ、楽しみな事例である。
 「親を追い抜こう」とする子側の気概と、「いつまでもと思わず、どこかでバトンを渡そう」と思う親側の一歩引いた姿勢、この2つがうまくかみ合ってこそ親子承継がスムーズいくように思う。

 今日は長い話になってすみません。
 それにしても完成形は本当に少ないですよ、この親子承継って。
posted by ヒロイ at 19:14| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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