事務所の顧問先であるが、二日がかりの業務であったので事務所のメインの担当者は私よりも一日早く車で現地入りして業務を行っていたが、二日目だけ合流する私が別の車で行くと帰りにそれぞれが運転して2台の車を連ねて京都まで帰ってこなければいけなくなってしまうので私はJRでこの顧問先に向かった。
福井といっても北陸本線や新幹線が通っている所ではなく、福井県の中でも取り残された感のある大飯郡おおい町というところで、すぐ近くにはいろいろな面で注目を集めている原子力発電所(大飯原発)があるが、原発関連の産業以外はほとんどない人気(ひとけ)の少ない町である・・地元の人、失礼な表現ですみません。
もちろん顧問先での仕事がこの日のメインではあるが、ここに行き着くまでの行程、そしてローカル線の車窓からの景色は私が田舎出身なので特に違和感はなかったが、はまさに日本の原風景という感じであった。
京都から特急に乗って1時間半で東舞鶴に着いた後 ここから目的地に行くまではJR小浜線の普通列車しかなく、乗っている時間は30分程であったが、乗り継ぎのため待ち時間は50分もあった。
駅でこれほど待ったのは久しぶりで、ここにはまさに地方の現実そのものがあり、時刻表を見てみると朝夕以外は列車は2時間1本で時間が最もあいている東舞鶴発敦賀行(小浜線)は11:06の次は13:38でなんと1本乗り遅れると次の列車まで2時間半もあいてしまうという都市部に住む者にとって驚くべき実態がそこにはあった。
この小浜線についてちょっと調べてみると営業係数(100円の営業収入を得るのにかかる営業費用)792、輸送密度(1日の乗客数)864人でJR西日本の営業係数ワースト27位であるが、もう少しこの赤字路線のワーストランキングに目をやると1位の芸備線(東城〜備後落合)は営業係数15,516、輸送密度20人という想像をはるかに超えるものであった。この数字を東京の若者が見ると きっと「意味不明」と思ってしまうのかもしれないですね。
今回のこのおおい町へは事務所の担当者は毎月2時間かけて車で巡回監査に行っているが、JRで行ったことは一度もないはずであるし、私も今回の訪問地以外でも京都から2時間近くかかる顧問先に出向いているが、毎回 高速道路を利用して車で行っているので今回のような”体験”は初めてであった。
日本中を見てみれば、今回訪問した地域が特別ではなく日本の各地にこういった状況の所は数多く見受けられるのであろう。この小浜線がワースト27位ということなので、JR西日本管内だけでもこの上?(この下)をいく路線が26あるということである。
都市部、特に東京一極集中が取り上げられているが、過疎の現実を目の当たりにしてショックを受けているというのが正直なところである。
ただ、決して住んでいる人がいないわけではなく、道の駅もホテルもスーパーも、車で少し行けばコンビニもあるので生活するのには決して困らないであろう。
ただ、車ありきの社会になればなるほど公共交通機関の利用者は減少し、その路線を維持することすら難しくなってきているのが現実であろう。
ちょうど目の前に衆議院議員選挙が迫ってきているが、福井県の小選挙区は2つの区(2人)であり、片や東京都は今回から選挙区が5増えて30区(30人)となり、この差は有権者数に応じて割り振られているとはいえ、福井県民の声が中央に届き、政治を動かすのはかなり厳しいものであることがうかがえる。これは和歌山県や鳥取県など他のいくつかの都道府県でもいえることであろう。
今日はたまたま乗ったJRから地方の生活の実情に触れる機会があったが、これはこれで自分にとって非常に貴重な体験であった。
ちなみに私が降りた若狭本郷の駅前にはタクシーが1台だけ停まっていたが、これもどちらかというと珍しい光景でタクシー乗り場というプレートだけあってタクシーのいないところが地方の駅では数多くある。
ICOCA(ICカード)が使えないので、久しぶりに券売機で420円の乗車券を買ったが、これが何とも新鮮で、仕事で来ているのに少しだけ旅気分を味わうことができた。
決して広いとはいえない日本ではあるが、この格差ってどうするのだろうと考えるいい機会にもなった。
ただ、決して都会がよいとか勝ち組であるとか 全く思わないのは、私が元々は田舎者なのからなのでしょうか。
この日の体験は事務所の中だけで仕事をしていると味わうことや感じることすらなかっただろうし、外に出ていろいろな体験をすることこそが仕事にも人生にも生かされるということかもしれない。
やはりじっとしていては何も得られないということでしょうかね。