2024年01月21日

No.865:厳しさが伝えられる経営者

 2020年12月に中国の武漢でコロナの第一例目が報告された後、わが国でも2021年2月中旬から瞬く間に国内全域に感染が広がり、そこからの2年間は正に“暗黒の2年間”であったが、今から思えば「あの頃は」と言えるくらいかなりの日数が経ったような気がしないでもない。
 特に昨年の春までの約2年の間にコロナで世の中が大きく変化したし、人間としての生き方も随分変わったと言っても過言ではないように思う。
 我が事務所の顧問先もコロナの初期段階では、ほぼ全業種で収入が激減し、中には資金繰りがひっ迫する顧問先も何件かあったが、何とか持ちこたえて 1件の脱落者も出さずにここまで事業を継続されているのは何よりである。

 ここへきて一見 落ち着いて見える世の中になってきたような感じもするが、いろいろなところでコロナの影響は残っている。
 先週 ある顧問先のドクターにコロナ前とコロナ後のクリニック経営の違いについて話を聞く機会があり、患者の動向、コロナ対応の診療報酬改定、感染拡大により従業員の確保も困難になったこと等 当時の状況を思い出しながら いろいろな方面へと話へ内容は広がっていった。
 この時に面談したドクターは、しっかり収益を確保して、可能な限り従業員に還元するというのをモットーとされており、症例の研究は当然のことながら、経営的な観点に立って患者や従業員にどう対処すればいいかも常に考えられておられ、毎月の面談は今後の取り組みの相談も含め非常に中身の濃いものになっている。
 先週の面談時にも そのドクターからの話は意外な内容であった。
 コロナ初期は、患者減もあるが何とかみんなで乗り切っていこうといろいろな相談を重ね、クリニックとしてでき得ることは全てされてきた。
 その後は、世の中の人から見れば「えっ、そうなん?」と思えるほど診療報酬の加算や補助金・支援金で収入が増えたことにより、わずかの期間ではあったが収入は増加に転じたので、その増収分の多くを従業員に還元されてきた。それは時間超過の残業代とは別であったので給与が通常月の1.5倍近くになる人もあった。
 それが・・。
 今のように平時になると給与は元に戻っただけであり、もちろん基本的な給与を減額されるようなことはないが、従業員に還元されていたコロナ増収分の特別手当はなくなるので 従業員のほとんどの人の手取額は減ることになり、中にはコロナ期があまりにも手厚かったので25〜30%ほど給与が減った人もある。
 給与の減額の理由はある意味当然のことではあるが、やはり“減る”ということをどのように説明しようかと考えていかれる中で、あの時の異常な忙しさと平時の現在との違いをきちんと認識してもらうことが大事であると考えられ、患者数は今のところそれほど大きく変わらないが、今後は患者の目が一層厳しくなったり、患者対象となる疾患が流行しなかった場合には、収入は間違いなく減少に転じることを過去のデータをもとに自らスライドにまとめ、毎月の定例会議で全従業員に報告された。
 こういった目の前にある経営状況の変化をきちんと伝えることができるというのがこの先生のすごいところであり、また 従業員を引き付けるところでもあるのだろう。
 従業員の退職者はほとんどないが、産休や育休で一時的に欠員が出る部分は早めの求人で補充をされる。なんと先日も1人の募集に10人近い応募があった。
 比較的若い従業員が多いが、産休・育休の後もほとんどの人が退職することなく復帰されるので、従業員の適正人員を考えたときには配置の面では難しいところもあるが、いつ訪問しても明るい雰囲気で生き生きした感じがこちらにも伝わってくるクリニックである。

 話しの内容が少しまとまりにくくなってしまったが、要は経営状況のいい時は特に何か手を打つ必要はないが、経営の厳しさが増したり、いわゆる 手詰まり感のある時に従業員に状況説明をし、情報を共有することがいかに重要であるのかということをこの先生から学ぶことができる。
 トップだけでできる経営なんてどこにもないし、そんな経営はきっともろいはずである。
 この先生は従業員に機嫌取りのようなことは全くされないし、退職希望者が出たときには引き留めることもされない。
 なぜか? 「その従業員のニーズを満たせなかった職場であり経営者だったので仕方がないな。残念だけど・・。私の方もできることしてるもん。」
 なかなか真似はできないがこんなことが言える経営者になりたいなと思う。 ただ 現実にはそんなことはなかなかできないけどね。
posted by ヒロイ at 16:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする