講演といっても日常的に業務として行っている“開業支援”の流れをまとめた内容で毎年 年1回のペースで10年以上行ってきているし、参加者も毎年変わるので年によって内容が大きき変わることはないが、ここ数年はクリニックのコロナへの対応についても触れてほしいという要望があったり、その年ごとにサブタイトルで多少 違いが出てきている
今年はコロナを特別なものとして捉える必要はないとのことであったが、その代わりというか 最近 以前にも増して希望する人が出てきているということで「第三者への(からの)医院継承」について触れてほしいという要望が事前にきていた。
この種のセミナーの講師を毎年しているので、開業後10年、20年となる先生からは「僕らのライバルとなるクリニックを増やさんといてな」と軽めのいい方とは言え、冗談では済まないような話しぶりで、結構 真顔でおっしゃる先生もある。
あらためてこれまで開業支援を手掛けてきた事務所の顧問先一覧を眺めてみると 一人一人の先生の開業時のご苦労やエピソードが結構鮮明に思い出されてくるし、簡単に開業できた人など誰一人としてなく、それぞれの先生がその時々においては真剣そのもので、ある意味人生を賭けた大勝負であったというのは紛れもない事実である。
こうして思えば、この仕事を継続的に手掛けているのは、私自身 それぞれの先生の開業時の悩みを共有できるやその真剣勝負に立ち会えることに一種のやりがいを感じているからなのかもしれない。
私は決して顧問先のライバルクリニックを増やそうという思いはなく、今日のような講師を長い期間 続けていると、セミナーで話をする新規開業の題材の中に既に開業されている先生方の経営内容の見直しやスタッフの問題、それに資金的なことで参考になることもたくさんあるし、それは私の税理士事務所の運営上、役に立ったり、ヒントになることもある。
今や開業して3年経つと追われる立場になるので、開業当初は比較的というか、予想以上にいい数字であったにも関わらず ついつい安心したり、気を緩めるのが早いと気づかないうちに停滞したり、下降傾向に陥るようなケースもある。
これはクリニックに限ったことではなく、どんな事業、商売にも通じることであると思うが、忙しすぎる中で計画的に一息ついたり、一服するのはいいが、ほっとして油断したり、気を抜いているとたちまち取り返しのつかない状態になることだってある。
そういう意味において、経営はまるで生き物のようでもあり、どこかの会社経営者が「ちょうどこんなもでいいかな と思った時から数字は下降線をたどってしまう」と言っていたが、これは常に気を張り詰めておくようにという戒めのように思う。
こんなことを考えながら再度 顧問先一覧を見ていると、確かにいい数字を残されている経営者やドクターは、常に「自分の会社やクリニックをどうしたらいいのか、どうしたいのか」ということを考えておられ、日頃から今後の展開についての相談も多いし、またいったん決めたことは間髪入れずに迷わず実行に移されている方が多いように思う。
今日もセミナーの冒頭と最後の締めに同じことを繰り返して言ったのは、「勤務医と開業医とで最も違う点は勤務医は全てが自分一人の責任になるわけではないが、開業医は誰が何をしようとも最後は全て自分の責任となる」ということである。
でも、10年も20年も気を緩めずに経営していくことって本当に根気がいるし、そのためには仕事以外で何か楽しみが必要なんですよね。楽しみが・・・。