当事務所の顧問先の多くを占めるクリニックは当然のことながら、製造、小売、建築とどの業種をみてもきちっと人が確保できている というところはほとんどない。
当然、給与水準が高いというのも魅力の一つであるが、中小企業で大企業並みの給与を出すことも、大幅な昇給額(率)とすることもなかなかできないのが現状である。
ファーストリテイリング(ユニクロ)が、「初任給30万円、給与は最大40%アップ、国内の人件費は約15%増」なんていうのを見て驚いたのは、中小企業ではなくどちらかというと上場企業を含め多くの大手企業であろう。
新卒にしろ、中途採用にしり、他の大手企業は、「これは普通のアップ率ではうちには人は来ないぞ」と焦ったはずである。
ユニクロの労働環境については、はた目で見ていて厳しそう という感じはするが給与で大きく差を広げられては、労働環境や働きやすさという観点でいろいろと策を練っても、給与面で比較されるとなかなか振り向いてくれないように思う。
また、政府が経済界に要請している、5%の賃上げも、「軽々しくうちは無理」なんて言えないのがこの春の賃上げ闘争であろう。
ただ、どこもかしこもこんな真似ができるのかは疑問である。
原材料や物価の高騰、人件費の高騰、さらには慢性的な人で不足 とこれからの産業界はかつてない荒波の中での航行を続けないといけないし、自社の利益の確保という点では、「うまくいくかもしれない戦略」ではなく、「必ずうまくいく経営」が必要であるし、まさに経営者の真の腕の見せ所であろう。
当然、大企業並みとはいかないが、中小企業もある程度は追随せざるを得ない部分は出てくるだろうし、この春の顧問先の昇給の相談は今まで以上に多くなりそうである。
これだけ物価が上がると、何とかしてあげたいと思うのが経営者であろうが、それを実現できる人、あるいは実行可能な経営状態の顧問先がどれだけあるのか なかなか厳しい現実が目の前にある。
大企業はやはり採用や給与のことがクローズアップされるが、中小企業は採用も当然のことながら大事であるが、いかに辞めさせない職場にするかということ
がそれ以上に大事なような気がする。
顧問先をみてもやはり人の辞めない事業所は、業績も安定し、次なることへも積極的に取り組めているような気がする。
相談や悩みが絶えないという顧問先も多いし、こちらでできることがあれば力(知恵)を貸したり、相談に乗ることもたびたびあるが、正直 一番困るというか、これではなかなか解決しないぞと思うのが 従業員に対する愚痴、不満、文句、そして中には怒りをぶちまける経営者である。
人を大事にできる経営者っていうのは、なかなかそう簡単になれるものでもないし、こういった世の中になってくると、「人を大事に」ということの中に、見劣りしない まあまあの給料が払えるということが今まで以上に重きを置かれてくるのかもしれない。
ただ、多くの顧問先を見ていて 人が辞める辞めないというのは決して給与の額が最大の要因ではないということを認識しておく必要があるし、そこがまだまだ理解してもらえない、「給与上げたら大丈夫」と思う経営者も結構いるというのも事実である。
いずれにしても人がいないと経営ってできないですからね、やめない事業所にすることが一番の生き残り策では・・。