これは楽しことが見当たらないというだけでなく、楽しいことがあってもその出来事の全てを人に言いにくい雰囲気がまだまだ世の中にはある。
乗り物好きの私も長い間、飛行機や新幹線には乗っていないが、仮に今後どこかへ旅行に行ったとしても、しばらくの間は以前のように「○○に行ってきてん、 名物の○○もめちゃ美味かったし」と言える状況ではないように思う。
ただ、徐々にとはいえ人の動きも出て来て、私の周りも多少なりとも明るい話題もちらほら聞かれるようになってきている。
今までのような遠方へ旅行に行った人にはなかなかお目にかかれないが、「娘のところに行ってきてん」とか、「久しぶりに じじばばに孫の顔を見せてきました」というような、身内の中で行き来された話は、この1ヶ月で何人からか聞いた。
コロナに関してはまだまだ油断できないし、この先 年末までに何が起こるかわからないので、気を緩めることはできないことに変わりはない。
こんな中で少しだけほんわかする話です。
ある顧問先の経営者(クリニックの院長)には、現在30前後のお嬢さんが2人いらっしゃるが、10年程前はそれぞれの成人式の晴れ着姿が院長のパソコンの画面出てくるようになっていて、照れながらも何ともうれしそうに私の方へ画面を向けられた。
先日 訪問したときは、二年前に結婚された長女さんへ住宅資金贈与の相談があり、その後、お孫さんへの教育資金贈与の話になったが、私は「お孫さん いつお生まれになられたんですか?」と聞くと、「いや、まだ娘は妊娠中で出産は来年なんです。先日、うちのエコーで見たらはっきりと見えまして、もう感動もんでしたよ」とおっしゃったが、思わず「お生まれにならないと贈与できませんよ。」と笑いながら答えた。
この先生とは、クリニックを開業された15年程前からのお付き合いであるが、何年経っても開業当時の謙虚な気持ちをお持ちで、患者さんの受けも大変よく(私の知っている人も患者で通っている)、また、コロナへ対応もどこよりも早く、患者も安心できるクリニックという見方をしているようである。
そしてこの4ヶ月はコロナワクチンの接種に追われ、いっしょになってそれに対応してくれたスタッフに対する待遇も院長の気持ちも込め 他のクリニックよりも手厚いものであった。まさに院長とスタッフが一体となり、体を張っての奮闘ぶりであった。
最後にこの先生の人柄を表したものとしての話をもう一つ。
3年前に還暦を迎えられた時、奥様とスタッフが院内食事会の中で番外の“還暦お祝い”を先生には内緒で計画され、それが実行に移された当日は、先生は驚きを超え、感無量の表情だったとのこと。
この先生はいい車にこそ乗っておられるが、必要な物はすぐ取り入れ、ムダなものには手を出さないという何か信念のようなものをお持ちの経営姿勢で、今まで銀行からお金を借りられたことは一度もない。
先日 説明をした決算数値は手堅い経営内容を表す数字が並んでいて、思わず「今回の決算数値は全く問題がありません。このままの形、今までどおりの経営姿勢で続けていって下さい。」と私の思いを率直に伝えるだけで終わった。
この先生は口数こそ少ないが、接していると「謙虚な気持ちは何よりも勝る」ということが伝わってくる感がある。
本当に顧問先の方々は良き見本の宝庫であり、まだまだ地に足がついていない私にとって、本当に見習いたい生き方が目の前にたくさんある。
変な話、これだけでも税理士っていい仕事だなとつくづく思う今回の話でした。