初めて1,000万人を超えたのが2013年であるが、その後、2018年には3,000万人、2019年は3180万人という数字になり、イケイケの日本政府は2020年には4,000万人、2030年には6,000万人というすごい目標も掲げていた。
外国人を呼び込むため空港だけでなく、大型客船が接岸できるように港湾の整備、そして民間ではホテルをはじめとするサービス業の異常なまでの急拡大、それはそれは凄まじいものであった。
京都市内でも地下鉄や市バスの車内も百貨店もドラッグストアもそして京料理のお店から抹茶アイスの店までもが外国人でごった返していた。
それが今や外国人の姿を見るのも1週間に1組か2組(どこから来たのか?)。先日の4連休も京都は賑わってはいたものの 見かけるのは日本人ばかりで、わずか半年でまるで別の所ではと錯覚してしまいそうなほど街の様子もガラッと変わってしまった。
さあ、ここまで広げた観光ビジネス、いや観光だけでなくすべての分野のビジネスやマーケットを現状に合わすのにはどれだけ縮小しないといけないのか、ここ数年、拡大するだけに躍起になっていた多くの日本企業や日本人にとって、縮小し、今の身の丈に合った形に戻すのは至難の業であろう。借金をして事業を急拡大したところも多いので、ここからの方向転換は果たしてでき得るのか 見ていて不安だけでなく痛々しささえ感じることもある。
これは民間だけではなく自治体、特に都市圏の自治体にとっては、「○○プロジェクト」と称してあちこちで開発ののろしが挙げられているが、果たしてこのまま突っ走るのか、あるいは縮小も含めて方向転換するのか難しい判断を迫られるところもでてくるであろう。
先日、確かJRが終電の時間を早めることを発表していたが、これも「24時間動いている街を目指そう」なんて言われれていたことからすると、逆方向の取り組みである。
景気の拡大期や事業の発展期には次から次へ新しい計画を打ち出し、それに必要な資金も金融機関から容易に調達でき あまり苦労もなく進められてきたが、今のこういった停滞期になると、立ち止まったり、場合によっては撤退(後退)していかないといけないが、こういったことの方がイケイケガンガンで物事を進めるよりもずっと難しいであろう。
店舗の閉鎖に始まり、最後の最後には人員整理まで、少しきつい言い方かもしれないが、人を切るのか、自社が潰れるのかという そんな状況が迫り来る企業も今後でてくるであろう。
今回のコロナ禍では、ここ数年あまり経験することのなかった 事業を縮小するということの難しさを身に染みて感じている経営者も多いと思う。
ただ この“縮小”という事象だけ捉えるとただ単に後ろ向きのようなことにしか見ないが、この縮小や事業の見直しにも経営者のセンスや能力が問われるのは当然のことである。
若い世代の人には分からだろうが、我々が幼少期の頃 流行った「365歩のマーチ」という歌の中に「3歩進んで2歩下がる」という歌詞があったが、日本はここ数年、この「2歩下がる」ことを忘れていて、「3歩進んで、(また)2歩進む」ということを続けてきたというのが実情であろう。
この歌詞のように敢えて「2歩下がる」ことができ得るのは、ある意味、健全で強固な財務体質を持つ企業ならではのことであろうし、こういう企業こそが2年後、3年後、そしてその後も残っていくんだろうなと考えてしまう。
離婚した人や離婚しようとしていた人から、「離婚は結婚より難しい」という話を聞いたことがある。
前に向かって進むときは簡単で楽しいけど、立ち止まったり後退するときは人生でも同じなのかなと つい妙なこととだぶらせて考えてしまった。
これからは押すだけでなく引くことも経営能力の一つであることを肝に命じながら、顧問先の方々といっしょになってアフターコロナに取り組んでいく必要があると考えている。
ということで、税理士事務所が行う経営指導も今まで以上に難しくなるなと感じている今日この頃である。