2020年03月22日

No672:“無利息融資”の恐怖

 まだ収まる気配のない新型コロナウイルスの感染拡大である。
 日本政府は“拡大”という言葉を使うことを躊躇しているようにも思えてくるが、まだ収まったと言える状況ではないのは日本国民の誰しもが思っているはずである。
 感染拡大とともに深刻な状況に陥っているのは日本経済(もちろん世界経済も)であり、景気の後退なんて生半可な言葉ではなく、景気だけみてみると危機的状況が近づいているとさえ感じることもある。
 今回の新型コロナウイルスの感染拡大の影響をもろに被っている企業の業績落ち込み幅は当初の予想を大きく上回る数字になっている。
 事業規模の大小を問うことなく、当事者である経営者の方に対して大変 失礼な話をするが、ここまでコテンパンにやられた後の対処方法は、
 @何とか自前の資金力でこの難題を乗り切る
 A緊急的に借りれるお金は借りて、当面の資金繰り悪化を乗り切る
 B傷口が大きくなる前に自ら廃業する  
 Cやむなく倒産
 が考えられるとあるとある雑誌には書かれていた。
 B、Cは避けられるものなら避けたいが、悲しいかな こういった最悪のシナリオしか残されていない経営者もこの騒ぎの後いくつも出てくるであろう。
 ただ、何とか事業は続けられたとしても Aの融資を受けた企業は、今度 長年にわたって元本返済に苦しみ続けないといけないという状況に陥ることも想定される。
 私も住宅ローンをはじめとし、事業用資金の借入もお世話になったことがあるが、借りるときは、「少しでも低い金利で」とまずは金利に目をやるが、いざ借りて返す段になると、金利のことだけでなく、延々と続く元本返済に参ってしまう。つまり企業の体力の消耗の根源になることだってある。
 そういう意味で、今回 事業を継続するために無利息融資制度を利用し、融資が受けられたとしも、“無”はあくまで利子であって、元本の免除があるわけではない。
 このことをしっかりと肝に銘じておかないと、お金を借りた後、とんでもない結末になることだってあり得る。
 
 私が税理士事務所を立ち上げた翌年の2008年に日本経済はアメリカで起きたリーマンショックの余波を受けた中で、当時の亀井静香金融担当大臣の鶴の一声で、「金融円滑化法」が成立し、お金が借りやすくなったことがあった。
 私の顧問先のある個人事業の経営者は、一定の書類を提出するだけですぐにお金が借りられたと、上機嫌で事務所まで報告に来られたが、実はこの方はその時点ではお金を借るなければいけないほど、経営状態は悪くなかったので、その資金で〇百万円もする高級車を購入された。
 その後、このリーマンショックの影響ではなく、ご自身の健康状態の悪化により、大幅な事業の縮小を余儀なくなされ、廃業寸前まで追い込まれた。
 少し健康状態も持ち直された後、私の事務所を訪ねてこられたときには、「必要のないお金なんて借りるもんと違うわ。この借入、利息は低いけど元本返済はまだ続いてるんです。今はこの返済のためだけに働いているようなもんです」とおっしゃった。
 必要でないお金を借りるということほど怖いものはない という事例のような話である。

 話を元に戻すが、このコロナ対策の企業向け緊急融資の案内が私の所にも送られてきているが、“無利息”という言葉に踊らされることなく、必要かどうかの見極めをして顧問先の融資の相談に対応をしていきたいと思っている。
 ただ、資金不足で目の前に立ちはだかる壁を乗り越えられないときには、後々のことをよく検討したうえで、希望の融資が受けられるように導いていかなければならないのは当然のことである。

 今回の騒ぎは、経営者にとって指針ともいうべく「備えあれば憂いなし」ということが通用せず、「何やってもムダ」というか、今までの常識が通じない事態になってきているが、春の訪れとともに何とか一日も早く収束に向かうことを願うばかりである。
 スポーツ、芸術の世界は現時点では観光・飲食業界ほど、その悪化状況が大きくはとり上げられてはいないが、この2つの分野も現在 収益が0(ゼロ)の状態が続いており、今後、事業継続不可 という企業や団体が出てきてもおかしくない。

 この何とも言えない世の中の無気力感はいつまで続くのだろうか。

posted by ヒロイ at 18:33| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする